風狂知音
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エジンバラ
■エジンバラ・アイルランド演奏旅行日記

風狂知音は8月の下旬から9月上旬にかけて、エジンバラのフリンジというフェスティバルで演奏してまいりました。8/24〜29はエジンバラで、フェスティバルに出演(6日間)。その後アイルランドに渡り2度のパフォーマンス。むこうでの風狂知音の演奏や、メンバーの様子が少しでも皆さんにお伝えできればと思います。
ツアーメンバーは、田村さん・津村さん・覚張さんのTHE風狂知音、手伝いで、由美子さん(覚張さんの妹)、原さんと私(風狂知音の音響を担当)の総勢6名。と、現地で右も左も分からない私たちをチャーリー(アイルランド出身の薩摩琵琶奏者で群馬県在住)が強力にサポートしてくれました。


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●TAMURA
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  【8/22 成田-アムスルダム-エジンバラ  
成田空港第1に全員無事に集合!(普段のライブにもこれだけ余裕をもって揃えばよいのですが)総勢6名!ちゃんといます。チャーリーは一足先に故郷のアイルランドに戻っており、フェスのエージェントと共にエジンバラ空港で待ち合わせの予定!
そして飛行機に搭乗!快調な滑り出し、で演奏旅行は始まったのでした。さて、乗って驚いた事に、最近の飛行機はとってもハイテク!全ての座席の前に液晶テレビが付いているのでした。(それぞれがお好みの映画や番組、おまけにテレビゲームまで出来る)更に驚いた事は前列に座っている覚張姉妹に起こっていました。(*この様子は隣に10時間以上座っていた原さんのコメントをごらん下さい)

成田からのアムステルダムまでフライトで印象的なのは、僕の隣の座席で電磁波から己?を守る為に、頭から黒い絹の着物を被る覚張さんの姿です。なんせ座席の目の前にテレビ画面、ヘッドレストの後ろには後ろの人が見る為のテレビが埋め込まれている。こじんまりとした座席、電磁波地獄からはもう逃げ場が無いのは必定。そして座席に着いた第一声を今も忘れません。「これは何?何の為に?」流石、覚張さん。テレビを目前に何の為に?と来るからもう答えようがない。僕はその真意を掴みきれず「さあ、なんででしょうね。」と、請け合ったがそれ以上は二人の求める回答は得られそうもなかった。と云うわけで、それこそ何の為に用意されていたのか、バッグから着物やら、様々な布を取り出しては画面にあてて、電磁波のチェックをしている。そして最終的にそれらを頭からすっぽりと被って、和製イスラム教徒の出来上がりです。(写真がないのが残念!)飛行機の中は得てして肌寒い。覚張さんは「寒い寒い」とステュワーデスに何度か訴えるが、何度目かに「具合が悪いのか?」と聞かれ、「そうではない」と答える。むろん、それ以上二人が交わす言葉は無かった。アムステルダムまでの11時間、覚張さんは後ろに寄りかかる事も、前に倒れる事もなく、そしてイスラム姿のまま時を過ごしたのでした。その心意気、電磁波に対する本気さを感じない訳にはいきません。その姿は正しく天晴でありました。そしてそんな現実をよそに、後ろの座席では田村さんが悠々とテレビ画面を楽しんでいた様です。こうして風狂一行は大空へ飛び出した訳です。電磁波と云う言葉が巷に流れる以前にその影響を危惧していたほどの電磁波知覚のパイオニア?の覚張さん。飛行機に乗る度、その後どんどん頼もしくなって行く様に見えました。覚張さん、本当にお疲れさまでした。<原>

さて、アムステルダム経由で無事エジンバラに到着。途中アムステルダムでの乗り換えでちょっと飛行機をお待たせたようだけれども、なんのその。
チャーリーとエージェントのクリスと無事に落ち合えてみんなひと安心。しかしクリスは若い。26才とのこと。大丈夫かな?皆同じ気持ちのよう。(大学生かと思った)もう夜の8時頃なのに空が明るい。日が暮れるのは9時頃。異国に着たんだなと、実感。タクシーでフェスティバル期間中に滞在するアパートへ!
明日の予定を確認して、夕食を取って休む。さあ、いよいよはじまりますヨ!明日からっ。


アムステルダム




  【8/23 エジンバラ  
いよいよ活動開始!先ずはRoyalMileInnで昼から20分の宣伝の為のパフォーマンス。時折小雨がぱらつく。ここはフリンジのメインストリートで、様々なパフォーマンスの宣伝が繰り広げられている。今日はどのパフォーマンスを見ようかという観光客でとても賑わっている。元々は大道芸から始まったフリンジ。ストリートでのパフォーマンスも様々なものが行われています。その中の小さな仮設ステージで風狂知音は昼から20分間、宣伝の為の演奏をする。結局、キーボードや電源の準備が難しい為、覚張、津村のデュオでパフォーマンスする。そのまわりで私達はフライヤーを配ることに。由美子さんの着物姿と堪能な英語は、風狂の宣伝に威力を発揮。向かうとこ敵なし!頼もしい。

RoyalMile inn


そして風狂知音のホームグランドとなる St.Cuthbert'sで16:00からサウンドチェックが始まる。(ここで明日から6日間毎日パフォーマンスをする事になります。)演奏会場はこの教会の三階にある部屋で片方は大きな壁画になっている。天井はとても高い。思っていたよりはやりやすそう。多分、少しは緊張はしているのだろうが、時差ぼけとブレンドされて程良い心地の中セッティングが始まる。
風狂の三人はというと、覚張さんはなにやらお払いらしき事を始めている。そう言えば教会に入って来る時、回りのお墓らしき石が幾つか倒れていたな! そりゃあお払いにも一段と力が入るであろう。その横では、田村さんと津村さんが「明日の昼間はエジンバラ城へ行きましょう!」とか計画している。なかなか、こういったときの三人の絵が風狂的で、また楽しい。
三人の演奏位置と音響のセッティングが大体決まり、終了。明日の本番からは、この状態に20分で準備しなけりゃならない。無事サウンドチェックを終えて、教会から出ると外はまだまだ明るい。やっぱり倒れている墓石の話題になる。それほど目立つ。良く見回すと随分と倒れている。エジンバラじゃこれが普通なんだろうか!やっぱり無縁仏じゃないかとか勝手な事を言い合っていると墓地のなかで田村さんと津村さんが楽しそうに記念写真を撮っている。そんなお墓に囲まれた教会で、明日から6日間のパフォーマンスが始まる。果たしてお客さんは来てくれるのか!お客さんの反応はいかに!!お客さんが少ないならば、お化けでもいい、ゾンビでもいい!とにかく盛り上がってくれ!!!

津村・覚張

昼食メニュー選び




  【8/24 エジンバラ日記  
今日はいよいよ、ライブ初日。会場には、16時入りということで、それまでは自由行動。田村さん津村さんは早速エジンバラ城に出かけた模様。いろんなお客さんを連れてくるかも!僕と原さんはライブの準備、も兼ねて市内観光!少しずつ街の様子が掴めてきた。というよりは馴染んできた。
日に一度は必ず雨が降ります。でも傘をさす人はほとんどいない。チャーリーは“傘をさすのは、女かオカマだけ”と言っていた。こっちの雨は日本の雨と違ってサッパリしている。当然私たちも傘なしで歩く。
いよいよ、始めての海外公演の第一回目が始まる。16:00にSt.Cuthbert'sに全員集合する。急いで準備。セッティングの時間が少ないので、演奏者の田村さん、津村さんにも椅子を運んでもらったり!恐縮です!どたばたとセッティングを終えて開場すると、待ってましたとばかりにお客さんが入ってきた。結局、すぐに20人近くのお客さん。嬉しいじゃないですか。ほとんどの人はフリンジのHPやフリーペーパーで、JazzIntuitionalismの紹介文(評論家の清水俊彦さんに風狂知音のCDを聴いて頂いた感想が掲載されています。この文章が素晴らしいのです。)を読んで来てくれるのであろう。清水さん、本当にありがとうございます!
いよいよ三人が登場!
本当にエジンバラまで来て演奏が始まっちまっただ!というのがまず正直な感想。
堂々とした正統派系あり(あくまでも風狂的)、激しい渾沌的演奏あり、のいつもながらの風狂的バリエーションが展開されていく。曲間の拍手がないのも普段の風狂的。田村さんが次の曲次の曲へと見事につないでいく。が、やはり所変われば音変わる。演奏が変わる。これから何回かのパフォーマンスごとに強烈に変化していく事を思うとなんだか血が沸き立ってきた。お客さんの反応も良い感じ。一人最後列でしきりにメモを取っているおじさんがいる。記者かなんかだろうか。
そして、盛大な拍手でパフォーマンスは無事終了。どうやら皆楽しんでくれたみたいだ。
さあっ これから爆発して下さいね!風狂知音のみなさま!
かたずけが終わって、教会の外にでると誰からともなく言い出した。「どうも、もう一人いるようなきがしますよねぇ。私ら以外に」そう。 その感じはこっちに着いてからずっと皆感じているよう。そして、このもう一人は、風狂知音の某グランドプロデューサー氏に違いない!ウン。間違いない! きっと相当、心配しているに違いありません。と、全員一致で結論が出て、みんなすっかり安心。さて、今夜は何を食べましょうかと、相談を始めるのでありました。

フリンジメイン

St.Cuthbert`sお墓



  【8/25 エジンバラ日記  
 今日は夕方のSt.Cuthbert'sの本番の前に昼からSt.Mark'sでランチタイムコンサート(宣伝用)がある。この会場は非常に音が美しく響くので、今回はPAなしの生音で演奏する事に。
本番前にチャーリーと機材を取りにCuthbert'sによると、教会の本堂(というのか?)からパイプオルガンが聞えてくる。中に入ってみるとその音(音楽)の濃さに息が出来ないほどに。程なくしてチャーリーが「空間にある空気ではなく壁の方を感じるようにしてみて下さい。」と、確かにそうするとさっきまではオペラ座の怪人のように聞えていたパイプオルガンの音色がなんとも清々しく響いて聞えてくる。凄いじゃないですか!!と、感嘆していると「余計なことを言って、ゴメンナサイですネー!」と謙虚なんだかそうじゃないんだか分からない一言。うーん、なんともけったいなアイルランド人と知りあったものだ。
さて、St.Mark'sでの演奏は非常に美しく繊細な音までが伝わってくる演奏になる。日ごろは天国から地獄まで様々な世界を見せてくれる風狂知音であるが(これはあくまでも私の聞き方、主観によるものですので、、あしからず)今日は“敬虔モード”な演奏であった。
さて一呼吸おいてホームグランドのSt.Cuthbert'sでのパフォーマンスが始まる。昨日よりもガッツリと3人の演奏感が伝わってくる。これこれ、この体感がこないと、こちとらエジンバラまで来た意味がないのです。ちょっと一安心。そして、ラストの曲が終わるとなんとアンコールが!非常に勢いがある演奏、お客さんの反応。ブラボー!!再び三人が舞台に戻り挨拶をして終了。やはり嬉しいものです。アンコール!
その晩、津村さん、原さん、と私で飲んでいると、津村さんがぼそっと一言「覚張さん、気張りすぎていてるね。聞えてないみたい、ピアノやギター。それに普段しないようなミスをしている。いろんな想いに応えようとしてるのは分かるけどね」と、う〜ん!! これは相当、重要なことだ。はっきり言ってそこまで気が回っていなかった。そこって風狂知音の一番のヘソの所ではないか! 演奏者同士の感応でどんどん自在に変化していくのが一番の魅力じゃないか!!でも、こうして話に出てきたということは、、、この事はきっともう大丈夫だ、と何故か自然と自信が湧いてくるのであった。ギネスビールが美味しいからかしら!!
でも、覚張さんに、どやって伝えよう、この事。

 メイン会場だったST.Cuthbert'sの聖堂でパイプオルガンを聞く機会に恵まれました。 低音が空間全体を下からゆっくりと征服しながら上がって行く様な印象の中で、チャーリーから面白い事を聞きました。
「音を観る時、日本では空間を観る。こちらでは壁を観るんですよね。」ほほう。 音は絶えず動く。しかしここの空間はピタリと止まったままずっしりと重たい。石で作られた建築物である事が教会の空間を重くしているのはその通りだが、その重さにさしたる疑問を抱いた事も無かった。
音が鳴り響く中で早速、空間を眺めてみる。やはりピタッと止まったままずっしりと重い印象で、今まで感じた事のある教会の空気感だ。 さて、次に壁見つめる。はて?壁の方が軽い印象。今までの壁は、動きの無い閉じる(区切る)ものだと自然感じてきたものが、ここの壁は空間より軽い印象なのです。そして壁の向こうに絶え間ない動きを感じるのだから面白い。
僕が勝手に作り上げ、抱いていた美意識の持ち方の大雑把な印象に 「西洋的美意識=外側(見える)、東洋的美意識=内側(見えない)」と云うのがあるようです。
かなり大雑把ではあるが、この印象に矛盾が生じる。オルガンの音が鳴り響く中、矛盾は様々な妄想を膨らませていきます。 壁の向こう側を無意識的に作り上げた西洋建築。いや、意識的だったと云う方がしっくりくる感じがしました。
(意識も無意識も詰まる所、表裏一体。西洋的なものと東洋的なものを自らの中で隔てたのは、自己主張的で出口の無いエゴの様な価値観なのではないのかと、一人心地る。) また改めて壁を眺めてみると、壁の向こうで蠢くものがパイプオルガンの音に乗ってたゆたう気がする。向こう側。そこで感じたものは、西洋的なものの中には、「向こう側」に対する意識がしっかりと有るという事。それは目視出来ないもので、無限に広がる可能性を秘めている気がした。東洋は、中に無限を観る。だが同時に外にも無限を探る事が出来る。
あくまで外へ外へと向かう西洋も、中へ中へ向かう東洋も、観ようとするものは似ている気がした。人間の特性でもある所だとは思うのですが、、、。どちらにしても未知と対面する時の態度は丁寧かつ謙虚であれ、という様な考え方は共通している気もしました。 どちらにも意味が有り、役割が有る。それぞれの時代で価値観は変転し、美意識も変わってきましたが、二つの極が存在するとき、どちらかに問題を探すのではなく、二極を融合出来ない事実に着眼してみようという考えが想起されました。


  【8/26】  

 今日は、日本領事館での昼食会とやらに風狂知音+チャーリー+スタッフは招かれている。
フリンジの日本からの出演者を集めての親睦会といった感じらしい。
 バタバタと出かける準備をしていると、覚張さんが「やっぱり私、残ってライブの準備をするわ。」と、言い出す。
確かにこっちに着いてからバタバタでろくに準備が出来ていないのは分かる、が!

 ま、しょうがないか!と思い、チャーリーに一応連絡。
覚張さんのことを話すと、『ダメ、ダメ、ダメ!絶対にダメです!ガッチャン』と電話を切ってしまった。
電話のむこうで、チャーリーの頭が真っ赤に染まってケムリが立ち昇っているのが目に浮かぶ。
 結局、覚張さんも渋々だが行く事に。

 さて、領事館に着いてみると、タクシーの都合で先に到着していた覚張さんがとーっても爽やかな顔でやってきた。「ココ、ええ所やネー」と。
まー良かった良かった。何よりです。

 先ずは領事長さんに挨拶。とても気さくな方でした。まだ、こちらに赴任して間もないとの事。そして「この領事館には音楽的なものが何もなかったのでピアノがあるといいなと、申請を出したら本当に通ってしまったんですょ」と。
いつの間に決まったのか、そのまだピカピカのピアノを田村さんが演奏することになる。

 『Sophisticated Lady』を弾き始める。うーん!普通のスタイルの演奏でもやっぱり素晴らしいです。とっても豪華な気分になる。

 さて、この日他にはコメディアンやパントマイム、音楽では『TAO』という和太鼓のグループの方々が招待されていた。
 TAOの人達とは結構話をする。彼らはフリンジ二回目だそうだ。彼らはフリンジですごく人気があるらしく、明日も追加公演があるとの事だ。
 そういえば、先日立ち寄った電気屋のおかみさんも、私が“フロム ジャパン”と言うと、オオー!と言って握手をしながら、明日はTAOをみんなで観に行くんだと言っていた。 当然私は、風狂知音も是非観にいらっしゃい、と誘うが、まだお店の営業時間中なので、行けない。と、すごく残念そうに言っていた。

 せっかくなのでTAOの追加公演、明日観に行ってみよう。

 さて、今日はSt.Cuthbert'sの一回のみ。準備もだいぶ慣れてスムーズになった。開演前には大抵、和服姿の由美子さんが教会の前で宣伝のチラシを道行く人達に配ってくれている。教会と和服姿の由美子さん、なかなかいい絵になっていそうだ。

マイクのセッティングをしていると、覚張さんが「こっちに来てから全然曲の準備が出来てへん」と、またぼそっと言う。昨晩の津村さんの話も頭をよぎる。さりげなく「大丈夫ですよ。覚張さん1人じゃないんですから。田村さん、津村さんという、強力な演奏家がいるのですから。三人いて、風狂知音でしょ。(これじゃ 三人揃ってキャンディーズです!みたいだ)」と、フォローになってるんだかなってないんだか。我ながらセンスの無さに、言ってから飽きれるのであった。
そんな事はお構いなしに、開演の時間はやってくる。

 お客さんは20人弱、いざ演奏が終わると、アンコールに近い盛大な拍手。(まだ少々 覚張幸子&風狂's という感じがあるが)
 ライブ終了後に、必ず1人2人は熱心にメンバーや由美子さんに話しかけてくる。
少しずつこうして風狂を面白がってくれる人が増えていくのは、嬉しい限りです。

リハーサル中の田村さん


  【8/27 】  

 さて、今日の午前中は津村さんと昨日領事館で知り合ったTAOを観てきた。
パフォーマンスはかなりエンターテイメントに富んだ内容で、オリエンタルな演出はかなり分かりやすい。
和太鼓の迫力、マッスルな筋肉美や振り付けがあり(ちょっとディズニーランドのアトラクションぽい)お客さんも家族みんなで楽しんでいた。当然満席。
  パフォーマンスの後、遅れて観にきていたチャーリーと合流してTAOの皆さんに挨拶にいくと爽やかに歓迎してくれた。そして素敵な千代紙のケースに入った名刺を渡してくれた。どうしてなかなか、ここまで和風を演出してくれるとは、ありがたく頂戴する。

 挨拶も終わって会場を出ようとすると、なんかチャーリーがもじもじしている。
トイレにでも行きたいのかなと思ったら、自分の名刺をTAOの人達に渡そうかどうか迷っているようだ。
彼らの拠点である九州は、チャーリーもよく琵琶の研究とかで行く事があるらしい。
舞台ではあれだけ立派な演奏をするチャーリーも、名刺一枚でもじもじとは、カワイラシイところもあったもんだ。結局名刺を渡しにいき、嬉しそうに戻ってきた。
 さて、今日の風狂のパフォーマンスは2回ある。
  先ずはいつものSt.Cuthbert'sで16時から。
今日はなんと日本から覚張さんの友人の石塚さんが遊びに来てくれた。仕事のスケジュールと上手くリンクしたらしい。もともとゆったりとした方なので、覚張さんも少しリラックスした感じがする。
演奏は昨日までとはかなり違い、何処か未知の世界に運ばれていく感じ。音楽の奥行きが果てしなくあって、その中の大きなウネリが静かに変化していく感じがする。
節目節目で風狂知音はこういう演奏をする。脱皮前の恐竜といった感じでしょうか!凄い。
演奏が終わると、石塚さんが「日本での演奏と随分変わったわねぇ。」と。どうやら彼女は一番面白いところでいらしたようです。 さすが!!

 さて、片づけが終わって外に出ると、エージェントのクリスが待っていた。これからもう一軒ライブのハシゴだ。

タイガーフェスという(フリンジとは別の)イベントでの演奏になるらしい。クリスの説明によると、今夜のライブには4バンドが出演し風狂知音はその2番目に演奏する、との事。
19時からリハーサルで本番は22時だからその間はゆっくり食事が出来るな、とか考えながらクリスの後をついていくと、何やら怪しげなビルに入っていく。
階段を上がっていきクリスが顔色一つ変えずに「ココが会場です」と言う。
案内してくれた所は、超ロックなライブハウス!中では大きな音量でレゲエがかかっており、また若者達がイイ感じにたむろっている。電磁波もなかなかのようです。
 田村さんがニコニコと「なんかスゴイところですねー。」と。
「いやー、こういう所ならエレキを持ってくるんだったなぁ。」と津村さん、ほんとに悔しそう。
「・・・・  」覚張さん、眉間に深ーいシワが寄っている。どうやらかなり怒っているようだ。
由美子さんは「本当にココでやらはるんですか?」
飯塚さんは「スゴイところですねー、なんだかワクワクしてきますネ」と、この人もニコニコと。

さて、エンジニアが少しして到着する。
そして、田村さんが演奏するピアノも一緒に登場した。
ウーン!やっぱり。『Roland』とピアノにかいてあります。いわゆるアコースティックではない電子楽器です。シンセと言うものです。
さて、そんな事はお構いなくセッティングは始まった。
まずは田村さんのシンセの音色探しを手伝う。なんとかピアノらしき音を探しだす。
覚張さんの立ち位置を決めてもらっていると(眉間のシワは更に彫りが深くなっている)エンジニアの彼が大音量でCDを鳴らし始めた。アチャー!また更に眉間のシワが深くなった。ステージで覚張さんが手で耳を塞ぎながら、「このうるさい音どうにかならへんの!止めて、止めて!!」と、もうすっかり関西弁で叫んでいる。ボルテージがココまで上がってくると相手が誰だろうと関西弁だ!
エンジニアの横で由美子さんが大声で必死に通訳をしている。由美子さんは僕の注文もエンジニアに伝えながらだから大忙しだ。
どうやらスピーカーのチェックをしているようだ。
なんとかCDの音が止んでリハの演奏が始まるが目もあてられない音の状態。覚張さんは仁王立ち状態(つまり一言も声を発声しない状態。マイクのチェックができなくてエンジニアが困っている。私も困っている)、津村さんもかなり演奏しずらそう。おまけにリハの時間も既にオーバーしているらしい。

エンジニアにこちらの要望を伝えるが相変わらずアチャー!である。しまいにはそのアチャーな状態のセッティングでミキサーにマークを付けだした。(リハの終了を意味します)
風狂の音響担当としては、このセッティングでそのまま本番を許した日にゃあ、日本に帰ってからカイシャクものだ!
結局、由美子さんに頼んで「本番は私がオペレートする」と、エンジニアに伝えてもらい、混沌のリハは終了する(打ち切られる)のであった。後は神頼み(でも、いつだって似たようなものです)

 さて、本番までの間ゆっくり食事でもしようと外に出ると、夕暮れの街の喧騒と風がなんとも気持ちいい。ホッとします。この世に戻ってきた感じ。今いたところはいったい何だったのだろう?

チンタラと食事できそうなお店を探す。それらしき店の前まで来て「ココはどうでしょう」なんて話をしていると、スタスタッと覚張さんが店の中へ入っていく。颯爽とこの場を仕切るがごとく店員さんに交渉している!っていうか、仕切っている。こちらに来てからはこういう事は大抵、由美子さん任せだったのだけれど。
どうやら先程の渦のようなリハで覚張さんのスイッチがONになったようだ。どちらがというと覚張さんが電磁波をバリバリ発信しているみたい。
こりゃ面白くなってきた。
しっかり食事をして(まさしく充電、という感じ)、会場に戻る。
何か分からないが燃えてきたぞ!

 さぁ、いよいよ本番! 
ライブハウスの中は若者達でごった返している。彼らは100%他の3バンドが目当ての客だろう。皆、仲間達と盛り上がっている。

クリスが一生懸命に「fukyo-chiin from tokyo」とか叫んでくれているようだがあんまり聞こえない。
とにかく演奏が始まる。若者達の喧騒と演奏が渦になっていて何が何だか分からない。
演奏も結構な音量がでているはずだがまわりの話声のほうが更にでかい。彼らは大音量の中でも楽しく会話する術を持っているらしい。こっちは神頼みでバランスをとる。

それにしても音の混沌具合が激しいなと思っていたら、ナント田村さんがシンセを鳴らしまくってこれを煽っているじゃあないですか。凄いことになっております!!
それでも暫くすると前の方の数人が、この人達は「いったい何をやっているのだろう」と、少し興味を示し始めたもよう。が、後ろの方はまだまだ歓談中だ。

演奏が少しずつ混沌から何かまとまった形に変化してくると あら 不思議!! 会場の様子が変わってきた。
ん!これはツボに入ったぞ。後ろの方からも興味を持った若者達が前まで出てきはじめた。
演奏はかなりファンキーな世界に。
覚張さんのVoもご機嫌にファンキー(電磁波全開ッ)。カッコイイ!

演奏が終わるとかなりの声援と拍手!ブラボー!!
エジンバラのロックな兄ちゃん、姉ちゃん達のハートをガッツリ掴んだ かも!
見ると、ずいぶんの人達が後ろの方から見に来ていたようだ。
大成功! メンバー、スタッフ、お客さん みんなの顔がほころぶ。
嗚呼、楽しかった。
今夜はビールが美味いぞー。


 夕方、一行はその晩に予定されたライブのサウンドチェックに行きました。なんとその会場は風狂に馴染みの無いライブハウスでした。エージェントのクリスがブッキングしてくれたライブで、全部で4バンドが出演する予定の3番目に風狂は控えていました。前後のバンドは僕が見た所、DUBとかテクノなどと云った雰囲気のバンドだったと思います。正にデジタルバンドに挟まれた風狂知音。それは僕にはとても新鮮で少しワクワクする様な空気を感じました。未知な物に向かう時に必ず起こるべき不安を抱きながらサウンドチェックは始まりました。そこには勿論ピアノが無い為に、田村さんはキーボードを借りての演奏になりましたが、これがまた何処から拾って来たの?と云う様な代物。それでも何とかモニターなどの調整も済んで、とりあえず一通りチェックを終えました。勿論その場は電磁波で一杯。覚張さんはその雑然とした状況の中でほとんど声を出す事が無かった様に記憶しています。最後の方で何か吹っ切れた様な雄叫びが飛び出し、マイクから音が出る事を確認してチェックは終了。さてどうなる事か? 一行は本番までの数時間の間、軽い食事などを取りに近くのパブを探しました。その時は、言葉も分からない覚張さんが先頭切って店を探してくれました。覚張さんの気合いを皆がひしひしと感じながらお茶やギネスを飲みながら本番の時間までゆっくりと時を過ごしました 。

さて本番。何時に無い緊張感を勝手に感じながら風狂ライブハウスステージが始まりました。田村さんのモコモコとした低音は正しくカオス。最初は低音のハウリングかと思いました。そこに津村さんのギターがこれまた混沌と絡んで行く。僕は70年代初期のマイルスデイビスを想起しながらニコニコしていると、周りのお客さんはあっけにとられている様子。実に面白い。この大人達は、つくずく半端はやらないと実感したのです。どんな趣味が有るにせよ音楽が好きなのは皆同じ。そんな風狂なテンションにその場の空間が動きだし、覚張さんの雄叫びで場は一瞬凍りつく、そして更なる流れを紡ぎ出して行きました。あとは流れるままに演奏が続き、スピーカーからの音も次第に自然感を伴って鳴りだしていく。混沌が次第に一つの塊となって聞く人をさらに揺さぶっていく。電気然とした田村さんの音がライブハウス独特の空気と風狂と繋いでいる様に感じたりしていると、何時の間にか人は前へ前へと集まっている。演奏の音が終わりを迎えると、お客さんは拍手喝采。思い込みも決めつけも何の役にも立たない。どんな場所もどんな人種も関係なくその場で共有出来る全てで臨んだライブ。更なる風狂の底力で新しい境地を何気なく切り開いたパフォーマンスであったのではないでしょうか。素晴らしき未知の連続、お疲れさまでした。<原>



  【8/28 】  

ここエジンバラでの演奏も残すところあと2日になってしまいました。

 今日は恒例の St.Cuthbert's の前に 昼からのストリート(Royal Mile Innの仮設ステージ)のデモ演奏がある。
今回は津村さん、覚張さん、に由美子さんが『舞』で参加。
何人かが足を止めて見ている。興味は主に、覚張姉妹の衣装に集まっているようだ。

やはりコメディータッチな曲芸や手品などは、とても人気がある。黒山の人だかりが出来ている。
他に人気が集まっていそうなところはアカペラコーラスグループとか、やはりパントマイム等の大道芸的なものが多い。どちらかというと音楽系は地味な感じにうつる。
こういった所でのアプローチはこれからの宿題だ。

 さて、夕方からの本番は?
今回、エジンバラでの最高の演奏になったのでは!3人の演奏はそれぞれがとても自由で伸びやかな印象をうけた。
とてもリラックスしていて上質な音世界が伝わってくる。ワンダフル!私も非常に満足!

なんか、こちらに来て、初めて平和な1日を過ごした気がします。

夜中に『フラメンコジャズ』というパフォーマンスを観に行く。ほとんど深夜なのにお客さんで一杯だ。
ギターとあまりやる気のなさそなベースとパーカッションのバンドと、大柄な女の人が重たそうに踊るのだが、、、、どこがフラメンコでジャズなのか分かりまっせん。
でも、ラッキーでした。たまたま会場にネイティブなフラメンコのグループが遊びに来ていて、歌の男性が飛び入り。何曲か参加してくれた。彼が声を出すと小屋全体が素晴らしい歌で響き渡り、至福。因みに原さんの横にその一団のダンサーらしい人がいたけれども、美人だったなぁ。踊るところを見てみたい。
単純な私は直ぐにスペインに行ってみたい、と思うのであった。

St.Cuthbert`s Piano




  【8/29 】  

フリンジ最終日。

今日は昼からのランチタイムコンサートがSt.Mark'sである。
風狂+チャーリー+トリーナのジョイントライブだ。出発前からジョイントライブの計画はあったがなかなか実現しないでいた。

さて会場に入ってセッティングをしていると、チャーリーとトリーナが到着。ところがチャーリーは琵琶を持っていない。どうしたのか、と聞くと「今日はトリーナだけで、私は演らない」と言う。

 エエッ、何故!

するとチャーリーは「トリーナは純粋なIrish、でも私は純粋なIrishな空気ではないから、風狂のみなさんは私とは演奏したくないでしょ」と言う。

 ナニー!もしや

それは、数日前の昼のカフェ。チャーリー、トリーナ、私でお茶を飲んでいた時、風狂とのジョイントの話がでた。チャーリーは「トリーナは、風狂の中で演奏する事を恥ずかしがっていて、自分が説得しても駄目。しかたさんが話をしてみて下さい。」という。
そこで私が説得することに。
「トリーナさんの演奏はこの間聴いて素晴らしく感動しました。その音楽からはアイリッシュのピュアな風を凄く感じた。」といったことを伝え、更に
「チャーリーは日本で風狂とは何度か演奏しているから、別に珍しくはないし、日本に長い間住んでいるから半分は日本人みたいなもの。でも、トリーナさんが今回参加してくれることは、純粋なアイリッシュの風を風狂知音に送り込んでくれることになり、それは風狂にとって素晴らしくエキサイティングでとても楽しいことだ。風狂のメンバーはみんなとても喜ぶだろう。
」なんて事を言ったのだけれども、チャーリーのことを引っ張り出したのは、少しでもトリーナさんにその気になって欲しかったからなのだが!
まさかチャーリーがこう取るとは。

チャーリー、ゴメンナサイです。この場を借りて、再度お詫び申し上げます。(何か不祥事を起こした企業広告のようになってしまった) 
さて、チャーリーの話を聞いて皆はびっくり、私は真っ青。「何を言うんだそんな事はない、是非一緒にやりましょう」と皆で説得。
では、とチャーリーはタクシーで急いで取ってくることに。
ふーっ、良かった!

セッティングの間、津村さんはトリーナさんに色々と話かけている。トリーナさんの緊張もほぐれてきた様子。
チャーリーも今度は琵琶を持って参上。
これで準備万端だ。

とても至福なコンサートでした。
普段から風狂知音の演奏には深淵な懐の深さを感じているが、そこにゲスト、それも今回のようにチャーリーやトリーナさんのような素晴らしい音楽性を備えたゲストが入った時には、懐は更に広大になるような気がします。

もうこうなってくると私はただただ神妙にその世界を拝受するだけ。
お客さんも凄く感動した様子で帰っていかれた。
後日談になりますが、トリーナさんは演奏前まではそうとう緊張していたそうですが、演奏がいざ始まると素晴らしく楽しかった、とおっしゃっておりました。

 さあ、エジンバラでの演奏は後一回となった。St.Cuthbert'sでのラストパフォーマンスが始まる。
やはり6日間も通うと、この教会にも愛着がわいてくる。名残惜しい。
そんな事をおもいながらセッティングを済ますと、お客さんが入ってきた。
皆、初めて来た人達なのでしょうが、6日間どうもありがとうございました、という気持ちでお迎えしてしまう。

昨日の三人の演奏がそれぞれに骨太になった印象。さらっと聴こうと思うと結構普通なのですが、良く聴くと津村さんも田村さんも、やってる!やってる! 実は相当濃いです。やっぱり。

最後にアンコールがある。曲は『What a Butiful Morninng』で、しっかりと此処エジンバラでのパフォーマンスを締めくくった。

田村さん 津村さん 覚張さん お疲れさまでした。
本当ならば、この後は皆で打ち上げ といきたいところですが、私と原さんはもう一仕事!
この後 チャーリーとトリーナさんのパフォーマンス『SAMURAI&BIRD』の録音を頼まれているのです。
で、打ち上げは皆さんにお任せして、私達は次の準備に。

今回はゲストで、由美子さんが『舞い』で参加することになりました。
最初に由美子さんが踊り、チャーリーが琵琶で入っていくという事に。

セッティングも終わりそろそろ開演かなと思っていたら舞台の方から由美子さんの声が聞えてくるではないか!見ると既に由美子さんが舞いながら唄っている。もう始まっていた。
あわてて録音を始める。
由美子さんが参加したことで随分と舞台が華やかになった。とても気持ちの良い始まりです。

チャーリーの琵琶、トリーナさんのアイリッシュハープと数曲ずつ交互に演奏が進んでいく。
日本-アイルランド-日本------ と変化していくのがすこぶる心地良い。 

トリーナさんの演奏の間はチャーリーは楽器を置いて神妙に座っているのですが、その姿は『妹を気遣うお兄さん』が見え隠れしているのが、また何とも良い雰囲気だ。
二人の演奏を聴いていると、二人をこの世に誕生させて育んできたご両親、そのご先祖様にまで どうもありがとうございます、と 言いたくなった。

演奏が終わってからチャーリー達が滞在するアパートへ行き、ワインで打ち上げ。
皆さん本当にお疲れさまでした。

さあ! 明日はネス湖だ! そして夜はアイルランドに入りますよー!!





  【8/31 】(アイルランド)  

 アイルランド。スコットランドとは打って変わって活気に満ちた人の目。エディンバラの人は柔らかく親切な印象があったが、ダブリンではちょっと違っている。もっと自己主張して来る様な勢いのある空気を感じる。それは時にポケットの財布を意識し、確認する様な雰囲気だ。 その日は、チャーリーの故郷でのパフォーマンス。ダブリン空港の近くにあるホテルを大幅に遅れて出発。郊外へ向けて飛ばす一行。開演時間を少し回った所で会場近くの駐車場へ車を付けた。

 到着した会場は気持ちの良い公民館風の公共施設と云った感じで、カフェもランチもできるし、ギャラリーもあった気がする。会場では準備万端整い、あとはミュージシャンの到着を待っていた様子。史上最速のセッティングを終え、ライブも無事終了。チャーリーの家族も聞きに来てくれた。とても気さくでユーモラスなお父さん、チャーリーと同じく優しい目をしたお母さん、妹さんは明るく笑顔が絶えない人だった。素敵な家族に久しぶりの再会でチャーリーも嬉しそう。スケジュールを管理しながら皆に気を配り、奮闘していた彼の頬が緩む。見ていてとても気持ちが和むひと時でした。その後、皆でチャーリーの家におジャマして泥炭の暖炉の香りに心地よく話も弾む。その後4人は明日の演奏予定の近くの宿に移動する事に。途中通りかかった城跡のレストランで食事をする。アイルランドの食事は個人的に舌に馴染んだものが多かった。普段取らない肉や牛乳も臭みが無く、美味しく戴いた。味付けが少し日本的な感じがしたのは僕だけだろうか? 夜遅くB&Bに到着し、隣のパブで打ち合わせもかねてギネスを戴く。アイルランドに入ってから初めてのギネスだがアイルランドのギネスはやはり本物。泡のきめが細かく柔らかい。お酒を飲む事の無い覚張さんも一口飲んだが、これは美味しいとコメントしていた。明日の打ち合わせも終わり、チャーリー、しかたさん、原の三人はまたチャーリーの家に戻り、ハーブティーを入れてもらって、夜明け前にゆっくりと床に着いた。



  【9/1 】  

 もう既に記憶が曖昧になり、時間と云う不治の病の様な幻想の力が、歪んだガラスの透明感を伴って黒い穴に落ちていく。そう云った瞬間を人はどのように過ごし、越えていくのか?そのようなリアルを考えただけでも気味が悪いです。ツアー中にそういった瞬間を感じたりしましたが、でもその詳細も既に忘れました。

 最後のパフォーマンスはステンドグラスのExbitionのオープニングパーティーで行われました。子供達が走り回り、小さな街の古い学校は窓から入り込む光でいっぱいでした。チャーリーがひとり厳かに琵琶の音を響かせて演奏は始まり、子供達も最前列でその繊細な音の不思議に聞き入ってました。会場は琵琶の世界に包まれ、チャーリーの声が更なる旋律を紡ぎ、終わりとともに盛大な拍手に会場が沸き上がりました。素晴らしい。彼の声と琵琶の響き、その世界から溢れ出す風景を感じる事はとても贅沢だと思いました。 ザワザワとしたオーディエンスの話し声が揺れる空間で、何気なく風狂の演奏が始まりました。やはり子供達は前の方に陣取って行儀良く、可愛く並んで座っていました。口をぽかんと開けた子や真剣に見つめる子供達を眺めるのは、緊張感と相まって清々しいものを感じさせてくれた様に記憶しています。日本の古いピアノの音が石の壁に響き、詳細に作り込まれたステンドグラスの技と風狂のうねりが独特のバランスを作り上げていきました。しっとりと、又はエキサイティングに演奏は続き、終了後はやはり万来の拍手に包まれ、ツアーの最後のパフォーマンスが幕を閉じました。皆さんがホッとし、僕もホッとした気持ちで機材を片付けていたら、レンタカーの鍵を車中に入れたまま鍵が閉まってドアが開かなくなる。そんな一騒動もありました




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